1.公表された令和2年税制改正大綱の要旨

改正内容は以下の通りです。わかりやすくするため詳細は省略しています。

①『賃貸住宅用建物の取得時の消費税を計算に含めず、これによる還付を認めない。対象となる建物は高額特定資産(取得金額1千万円以上の資産)に該当するもので賃貸住宅に使用しなことがあきからな建物の取得を除く。賃貸住宅用かそれ以外の用途は、契約書でなく現況で判断する。』です。

②適用関係は、『令和2年10月1日以降取得する建物で令和2年3月末までに契約した建物を除く。』です。

③なお、消費税の計算に含めない場合、調整計算の期間内に売却した場合、賃貸住宅以外の用途に転向した場合、調整計算に加算する。

④意見書で事前に公表されていた金取引を利用した消費税還付の規制はありませんでした。改正内容は事前に公表されていた意見書とは全く違います。

 

2.令和2年9月末までに賃貸住宅建物を取得する方、令和2年3月末までに賃貸住宅建物の取得契約を行う方

消費税の還付を受ける最後のチャンスです。確実に還付が受けられるように当事務所にご相談ください。

3.すでに消費税の還付を受けている方

今まで通りの手法で3年後の調整計算を回避できます。3年後の調整計算を回避する手当をしていない方は当事務所までご相談ください。

4.今回の改正の問題点

(1)賃貸住宅建物の取得は控除対象外になったが、賃貸住宅建物の売却は課税取引のままであり消費税が課税される

売却については消費税が課税されるが取得については消費税の控除が受けられないこと(3年後の調整計算までの売却・転用を除く)。賃貸住宅の取得を課税取引のまま、仕入れに関する消費税だけは控除させないとした新手法は、もう、合理的根拠では説明できない。平成3年の改正と同じように賃貸住宅用建物の取得を非課税取引にすれば、売却も取得も非課税になって賃貸住宅事業者に消費税の負担がなくなりますが、賃貸住宅の建設事業者、賃貸住宅の販売事業者に消費税を負担させることになるので非課税取引にする事を避けたのでしょう。課税当局の『賃貸住宅事業者に消費税を負担させる。絶対!』とういうような課税当局の怨念のようなものを感じます。

(2)賃貸住宅賃貸事業者だけが、消費税を負担について、更に、不公正な取り扱いをうけることになったこと

『消費税は消費者が負担する』という創設時の理念は忘れ去られました。平成3年から非課税取引を主とする数業種の事業者が消費税を負担することになりました。これを事業者の『損税』といいます。逆に国庫には同額の『益税』が発生しています。令和5年度には免税事業者の『益税』を排除する税制改正が行われるのに、国庫の『益税』はなんら排除する手立てをしません。同じく非課税取引に指定されている保険適用の医薬品の販売には、薬価基準の算定根拠に消費税の金額を含めており、保険給付として国庫より実質的な還付を受けています。製薬会社の政治連盟が『製薬業界には損益はありません。』と公表資料を作成してしまう始末です。政治力ある業界は優遇されるのですね。

代表税理士 三田優徳